PORT!#5レポート/2017年はこれが来る!デジタルクリエイティブ業界で活躍する9人が予測する未来とは(後編)

PORT!#5レポートの後編です!THE GUILDの深津貴之さん、FICCの福岡陽さん、dot by dotのSaqooshaさん、Rhizomatiksの田中陽さんが見据える「2017年のデジタル業界」とは?

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クリエイティブの現場の声を届けることで、“この場所でIMPORTしたことを自らのフィールドでEXPORTし、日々をアップデート”するヒントをシェアするCINRA, Inc.主催の「PORT!」。2016年12月7日に行われたシリーズ第5回目は、『PORT!#5/2017年はこれが来る!デジタルクリエイティブ業界で活躍する9人が予測する未来とは』の後編をお送りします。

「サービスの内製化とどう戦っていくか」/深津貴之(代表取締役/株式会社 THE GUILD


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深津さんのトークテーマは、「サービスの内製化とどう戦っていくか」。2016年は「大手企業が運営するWebサイト、Webサービスが広告代理店経由で外部委託されるのではなく、少しずつ、内部製作にシフトしてきた」1年だったと深津さんは振り返りました。クライアントワークの外部委託と内製のPSCAサイクルの違いを実感し、「Webサービスやアプリ開発の場合は、PDCAのスピード感に外部受注ペースがついていけない」と分析。外部受託案件は、2017年からは「単発の受発注からゆるいパートナーシップ、協業にシフトする動きが始まるだろう。同じように、見積もりベースの案件型から期間ベースの定額コンサルティング型へと少しずつシフトしていく」と予測し、「デザイン会社を手に入れた外資系の大手コンサルティング会社が、既存の国内大手広告代理店とどう戦っていくかが、2018年くらいまでの見どころではないか」と語ります。そうなると、制作会社も受託案件を減らして自社サービスを増やすだろうが、逆に求人面では制作会社を目指す人が減るのでは?と予測。フリーランスも内製チームとの協業が増え、特殊技能を活かしたパートナーシップを構築する方向に向かうと言います。そういう背景予測から導かれた結論は、「2017年以降、いちばん面白いことをやるなら、いかにクライアントと直結できるかが勝負になる。企業に声を掛けてもらう面白い仕事を続けることで、停滞したデジタル業界をひっくり返せるのではないか?」と話を結びました。

「ストーリーテリング」/福岡陽(シニアクリエイティブディレクター/FICC inc.


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「時間がないのでサクサクいきましょう」と言いながら、福岡さんが最初に投げかけたのは、「先ほどからみなさん未来の話をしていますが、それどころじゃねーぞ!というのが今です!」という問題提起。そんなことよりも「今を生きる技術が必要」と言い、福岡さんは「ビジネスもプライベートも、常に私たちの目標は、相手を納得させて、自分の主張を通し勝利すること。でも現実はコントロールできません。それを制御するのがストーリーの力です」と主張。『ONE PIECE』の主人公と作者の関係を例に挙げ、ストーリーの世界において、正義を決めるのは作者だが、現実では世間が決める。そこで福岡さんは、「誰も反論できない正義(=ストーリーの主人公)の基準を決定する新しい方法を考案しました、それが〈ユニバーサルコレクトネス(UC)〉です」と述べ、UCの定義を紹介した。「対立関係ができた場合は、絶対にUCが高いほうがストーリーの主人公になります」と福岡さんは言う。そのUC値は、「人命>個人の利益」という定義によって決定。例えば、ちょっとエッチな同人サークルと一般市民の小競り合いでは、「個人の利益を追求する同人サークルに、“子どもたちの将来を守る”と掲げた一般市民は勝ち、ストーリーの主人公になれる」と言います。「では、どうすればいいか?対立しなければいい。同人サークルも相手の主張に則り、活動方法を変化させれば立場の逆転が可能になる」と説いた。そこから導き出される結論は、「勝ち続けるためには、常に世界のUCの変化に気を配ることが大切。そして社会に対して(UC的)正義を貫いていけば、個人と世界の利益は両立します。今年はインターネットのクリエイティブ世界でもいろいろなことが起きましたが(苦笑)、正義の味方で居続けましょう!」と檄を飛ばした。

「Real Virtuality」/Saqoosha(CTO・Programmer/dot by dot inc.


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“クマをかぶったプログラマー”としておなじみのSaqoosha(さくーしゃ)さんは、VRコンテンツの作り手としても有名だが、彼が「今、注目しているのは……」と語り出したのは「Virtual Reality」ならぬ「Real Virtuality」だった。「バーチャルリアリティは現実的な仮想空間を作ることですが、リアルバーチャリティは現実空間で行われているのに、バーチャルに見えるもの」だと解説する。そして、「具体的に何かというと、ドローンレースです!」と、YouTubeなどで公開されている海外の有名なドローンレースの大会映像を紹介しました。Saqooshaさんが観せてくれたレース映像は、レース用ドローンの先端に付いたCCDカメラで撮影されたもの。プレイヤーはカメラ映像を映し出すヘットマウントディスプレイを装着してスピーディーなドローンを操縦、「まるでドローンに乗っているかのような、ゲームっぽいけどリアルな体験ができる」のだ。現在は世界中に様々な団体が国際的なドローンレース大会を開催しており、ドバイで行われている「World Drone Prix In Dubai」は賞金総額も1億円超!イギリスの15歳少年が率いるチームが優勝を果たして注目を集めたそう。日本でも、2016年に初の本格的ドローンレース「Drone Impact Challenge」がスタート。「もうすでに(ドローンレースは)来てます!」と、Saqooshaさん。そして「海外のドローンリーグはエンタメ度も非常に高いが、中継技術がさらに発達すれば、よりゲームのように楽しめるはず……やりたい!!」と、ドローンレースの魅力を熱く語ってくれました。

「AI」/田中陽(Design Engineer/Rhizomatiks co., ltd


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斬新なメディアアートを多数手がけるライゾマティクスの田中さんは、プレゼンテーションが始まるや否や「未来とか……わからん」と言って会場を沸かせつつ、AIをテーマにトークを展開。AIの世界は「人間の知能そのものを持つ機械を作ろう」という立場と、「人間が知能を使ってすることを機械にさせよう」という立場のふたつがあり、田中さんが今興味があるのは後者の機械学習の分野で、勉強をしているところなのだとか。その成果のひとつとして紹介されたのは、インタラクティブ・グラフィック・映像領域を中心に活躍するクリエイターの展示会「UNFRAME EXHIBITIONS」で発表した『AI x AI』という作品です。この『AI x AI』は、「〈愛〉をテーマにした映画を機械(AI)に観せることで、AIがそこから感情(愛情)を見いだせるか?」を実験したプロジェクト。映画『レオン』の画面に何が映っているかを自動テキスト化し、キャプションを付ける作業を繰り返させ、「機械が観た『レオン』のテキストデータ」を学習データとして、「Love」というワードを与えて文章を自動生成させたという。その結果、「例えば『レオン』に出てくるすべての表情データからの喜怒哀楽、登場人物の年齢、音楽などを時系列で並べると同時に、テレビの前の視聴者の喜怒哀楽のデータをフィードバックそれを次の学習データとして強化学習させる事で、ユーザーの好み、最終的には人間の感情をも推論していくことが出来るのでは?というアイデアに至った。いかにデータのフィードバックを意識して機械自身が勝手に自己学習する仕組みを作れるかという所に興味が湧きました」という。「AIは実用化レベルに達しているが、使う側の倫理観や、法的な課題が残っていて、そこを題材にした作品にも興味がある」のだそう。人工知能による自動作曲Webサービス「Jukedeck」や映画トレーラーの自動生成、画像判別ソフトなども既に実用化されている現状に、「AIの今後が楽しみですね」とトークを締めくくった。

テクニカルな話からエンターテイメントまで、幅広い題材をテーマにデジタルクリエイティブ業界で活躍する9人が、十人十色の未来予測を繰り広げた『PORT!#5/2017年はこれが来る!デジタルクリエイティブ業界で活躍する9人が予測する未来とは』。本イベントが開催された2016年末は、インターネット業界を揺るがすニュースが世を席巻したこともあり、業界全体が方向性を模索する時期とも重なっていたからか、より現実的な視点からの未来予測が展開されていたのも印象的だった。9人の未来予想図から、2017年のクリエイティブへのヒントを、ぜひ見つけてもらいたいです。
(文:阿部美香)

NEXT EVENTPORT! VOL.7

PORT!#7/ SONY×リクルート 手法に頼らないリアルなUXデザインの現場!

2017/05/29(月) 19:30 〜

ソニー株式会社 入矢真一,株式会社リクルートライフスタイル鹿毛雄一郎,株式会社リクルート磯谷拓也,CINRA, Inc.伊藤亜莉

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