PORT!#4レポート/新しい働き方をどう伝えるか? 雑誌・イベント・WEBメディアの担当者が語る企画術!

『BRUTUS』副編集長の鮎川隆史さん、「TWDW」主宰の横石崇さん、『CINRA.JOB』ディレクターの山本梨央によるPORT! #4レポート/PORT!#4 新しい働き方をどう伝えるか? 雑誌・イベント・WEBメディアの担当者が語る企画術!

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“この場所でIMPORTしたことを自らのフィールドでEXPORTし、日々をアップデート”をキーワードに、クリエイティブの現場からの声を届ける。CINRA, Inc.主催の『PORT!』は、デザイン、エンジニアリング、編集など様々なジャンルの第一線で活躍するコンテンツ制作者、クリエイターらを招いて、“知識”や“知恵”をシェアするセミナーイベントです。 

2016年9月21日(水)に行われたシリーズ第4回目となる「PORT!#4/新しい働き方をどう伝えるか? 雑誌・イベント・WEBメディアの担当者が語る企画術!」は、Web制作現場でのノウハウを中心に語られてきた過去3回とは趣を変え、“編集”がテーマ。Webに限らず、広い視野からコンテンツ制作における企画術にスポットを当てました。

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トークゲストにお迎えするのは、老舗出版社・マガジンハウスの雑誌『anan』、『POPEYE』編集部を経て、現在は『BRUTUS』副編集長を務める鮎川隆史さん。数々のメディアサービスにまつわる新規事業に関わり、現在は「& Co.」の代表取締役である横石崇さん。そしてCINRA, Inc.からは『CINRA.JOB』のディレクター・山本梨央が、語り手となりました。鮎川さんは、今年7月に発売された『BRUTUS』No. 828で、各業界の優秀な人材を輩出する場所に着目した特集「一流が育つ仕事場。」が話題を呼び、横石さんは、のべ1万人以上の参加者が集まる新しい働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」(以下、TWDW)を運営中、そして山本はクリエイティブ業界に特化した求人サイトを担当……と、3人とも“仕事”や“働き方”を新しいコンテンツとして展開した立場から、企画と編集を語りました。

「雑誌はWebにスピードと情報量では勝てない。だから“目線”が勝負どころになります。」

 まず興味深かったのは、それぞれの登壇者がコンテンツとして扱う「人・切り口の見つけ方」。企画術と編集方法の根幹を成すテーマです。鮎川さんはまず、「『BRUTUS』は切り口が命です」とズバリ。「雑誌はWebにスピードと情報量では勝てない。だから“目線”が勝負どころになります。Webを検索して出てくる記事や文章を扱っていてはダメ」と、Webメディアと雑誌の企画・編集の違いを述べます。さらに「大規模なWebメディアは何十万、何百万のビューを稼ぐことが目標だが、雑誌は販路の構造上、10万売れれば大成功。特定の10万人に面白いと思ってもらうことがミッションだから、みんなに好かれる記事は作りません」。だからこそ重要なのは、「人と企画の組み合わせ」。編集者が見たい・知りたい・読みたいと思う個人的な欲求を手掛かりに、意外性を切り口にするのだそう。「一流が育つ仕事場。」特集では、アメリカ西海岸の超有名レストラン「シェパニーズ」を紹介。「普通なら有名過ぎて避ける企画だが、めったに表に出てこないオーナーを撮影できたからこそ、巻頭の目玉企画にするとGOサインを出した」と、『BRUTUS』のスタンスを話してくれました。

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同様に、横石さんもトークイベントやワークショップが中心の「TWDW」では、「どんなトークテーマで誰をスピーカーに選ぶかが重要」だと紹介。「本音で仕事や働き方を語り合うイベントなので、できる限り実際に会って話をして、本人が本音で語れる人だと確信を得てからステージに上がってもらいます。話すテーマも“サラリーマンの逆襲”のように一見「?」と思うような、異質だからこそ興味を惹くものが多いが、じつはタイトルの決め方は『BRUTUS』を参考にしています」とニッコリ。「TWDW」自体が「雑誌の編集をイベントという場に持ち込んだらどうなるか?」というメディア的な実験の場でもあるのだとか。山本も「CINRA.JOBの取材は、ただの求人募集に収まらない内容を意識。“人の想いにフォーカスする”というCINRA.NETの編集極意を受け継ぎ、その会社にとっては当たり前でも、外から見たらじつは当たり前じゃないことを積極的に取り上げて、他の求人サイトとの差別化を目指しています」と、企画の切り口について話しました。

3人にとって「思い入れのある企画」とは……?

そんな3人が、今まで作ってきたもののなかから「思い入れのある企画」を挙げたトークテーマ。山本の印象深い企画は、就活生が書くエントリーシートの文章表現について指導した連載。執筆者の文章表現エデュケーター・山田ズーニーさんは『ほぼ日刊イトイ新聞』のコラムでも知られ、山本が学生時代、授業を受けていた先生でもあったとのこと。そんな山田さんの連載を手がけられた喜びはもちろん、他の求人サイトではできない切り口を実現した企画として強く心に残っているそうです。

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横石さんが「TWDW」で行ってきた数多くのイベントの中で印象深い企画といえば、フィッシュボウルという100人のお客さんと共に全員参加型の対話プログラムが実現できたこと。「世界的に有名なトークプレゼンテーションにはTEDがありますが、完成された講演ならYouTubeで観ればいい。TWDWは全員に筋書きのない状態で話合いをして欲しいので、スピーカーと参加者がマイクを取り囲んで、喋りたい人がマイクの前に立つフィッシュボウル型を採用したら、みなさんマイクを離しませんでした。(笑)ただ話を聞くだけでなく、自分が話すことが一番の学びであることも実感した」と、TWDWのイベント企画が“参加者の余白”を大切にしていると話しました。

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そして鮎川さんが最近、印象的だった『BRUTUS』の企画記事は、8月発売のNo. 832のメイン特集「ファッションジャーナル2016」。「おしゃれ街道まっしぐら。グッチも惚れた天下御免のトラック野郎。」というコラムを掲載していますが、これはGUCCIの秋冬キャンペーンの広告からインスパイアされたもの。映像やイメージ広告で日本のカルチャーを取り上げるファッション企業はこれまでも例がありましたが、今年のGUCCIはなぜか、パチンコ店と並んで“デコトラ”を大々的にフィーチャーしています。そのユニークな現象に着目した鮎川さんは、映像に登場した茨城県のデコトラドライバーにアポイントメントを取り、現地まで取材に行ったといいます。「デコトラはもともと、アート作品として海外で人気があります。今のファッション業界は、細分化が進んでつまらなくなったと言われ、次の潮目を読む時期に来ている。そこでGUCCIがデコトラを取り上げたのは象徴的と思い、取材を敢行しました」と鮎川さん。実際にデコトラを目にした鮎川さんは、その圧倒的な迫力とアート性に驚きつつ、今の新生GUCCIのクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレが、デコトラとシンパシーを感じている理由がわかったような気がしたそうです。なお、鮎川さんはこの取材で、デコトラ本体のみならずドライバーの方にもいたくショックを受けたのだとか。「映像でもご自分のデコトラを運転したドライバーの方は43歳で、奇遇にも僕と同い年。でも、なんと……もうお孫さんがいらっしゃるんですよ! これには驚きました(笑)」。

良い企画をつくるために心がけている編集者としてのマイルール

そして、『PORT!#4/新しい働き方をどう伝えるか? 雑誌・イベント・WEBメディアの担当者が語る企画術!』トークのラストを飾ったのは、「編集者としてのマイルール」というトークテーマ。ここでも3人は、3者3様の答えを残したのでした。

鮎川さんの仕事のモットーは、「なるべく多くのことに興味を持つこと、好奇心を持つことです。雑誌の編集をやっていていると、いろんな人に会えるし、いろんなところに行ける。それが、僕が編集者という職業に就いた理由のひとつでもあるんです」。ちなみに本イベントの序盤で鮎川さんは、雑誌が出来上がるまでの仕事の流れを教えてくれたのですが、『BRUTUS』は総勢10名で制作しており、1〜2名の班でローテ−ションを組んでいるそう。特集記事の企画内容も自分の得意分野を担当するだけでなく、さほど得意ではないジャンルの企画も編集部内のローテーションで担当することも多いのだとか。また「週刊で発行されている『anan』編集部時代は、本当に修行の場でした。メイクの記事を作るときは、正直、製品の違いなどは分からなかったですが、女性用のファンデーションを自分で塗って試すこともしていました」と鮎川さん。広範囲に情報を扱う雑誌というメディアの編集者だからこそ、幅広い興味と知的好奇心を絶やさぬことが、必要とされるのでしょう。

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もちろん培った好奇心は、よりよい企画作りにも影響します。これも雑誌の制作過程のトーク中に出てきた話ですが、『BRUTUS』のヒット企画「一流が育つ仕事場。」特集は、部下は上司が言った言葉をよく覚えていて人生の転機となる大きな気づきを得るが、上司本人はその言葉を覚えていないものだ、という経験から生まれたものだという。それはつまり、言った側ではなく、受け止めた側に発想のヒントが隠されていたということ。それに気づいた鮎川さんは、いい仕事をしている人、その理由を知るには、多くの人材を輩出した会社の偉い人に取材するのではなく、その会社で育った出身者に話を聞くべきだ! と思い、特集の骨子を固めていけたそうだ。それも、鮎川さんが興味の幅を広げることで、多角的な物の見方ができるようになったからこそかも知れない。

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続いて、編集者としてのマイルールを語ったのは山本。彼女も鮎川さんと同じく、好奇心を持つことが大切と言い、クリエイティブな求人情報を扱っている仕事柄、「私は映画好きですが、映画は必ずエンドロールまでしっかり観て、その映画に関わった会社の名前をチェック。そしていろいろな場所に出向いて、多くの人と知り合うよう、プライベートでも心掛けています」と語りました。最後に、「大学時代にマガジンハウスでアルバイトをして編集者に憧れていたが、雑誌や書籍の編集にはなれずに、イベントを通じて今、編集者的な仕事をしている」という横石さんは、自分のルールを「余白を大事にすること」と断言。さらに「何事も“期待”が人を動かすエネルギーになる。TWDWに1万を超える人が集まってくれているのも、働き方の未来にたくさんの方がが期待をしているから。“余白”と“期待”をキーワードに、どうTWDWを作り上げていけるか?を日々考えています」と、編集者としての現在を語ってくれました。

 “働き方”にまつわるコンテンツに携わる3人が、企画と編集について語り合った『PORT!#4/新しい働き方をどう伝えるか? 雑誌・イベント・WEBメディアの担当者が語る企画術!』。鮎川さん、横石さん、山本3人それぞれの心構えやポリシーとノウハウに、コンテンツの形態は何にせよ、企画の発想の種となるヒントを、いくつも見つけることができたのではないでしょうか。
(文:阿部美香)

 

NEXT EVENTPORT! VOL.7

PORT!#7/ SONY×リクルート 手法に頼らないリアルなUXデザインの現場!

2017/05/29(月) 19:30 〜

ソニー株式会社 入矢真一,株式会社リクルートライフスタイル鹿毛雄一郎,株式会社リクルート磯谷拓也,CINRA, Inc.伊藤亜莉

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